このページでは給与を前払いした分の費用について、勘定科目の仕訳例を解説しています。
前提として、「前払給与」という勘定科目はなく、前払いした給与について会社がどのように考えているのかを定めることが必要です。
本来、会社から従業員へ支払われる給与・給料は、雇用契約によって定められている労働期間に、必要な業務を行い、その労働対価として支払われる金銭です。そのため、規定の労働期間を満了していなかったり、労働を行っていないにもかかわらず給料を前払いした場合に、その費用がどのような解釈がされるのかを考えなければなりません。
給与の前払いを行う際、給与として支払うのでなく、あくまでも会社から従業員に対する信用にもとづいた、従業員への金銭の貸し付けだと考えることができます。その場合、勘定科目の仕訳も「貸付金」として処理されます。
また、給料日に規定の給与額から減額して渡すことで、貸付金の返済を受けたと考えれば、貸付金勘定からの減額として取り扱わなければなりません。なお、貸付金に対する源泉徴収は不要です。
給与の前払いを貸付金として考えれば、源泉徴収は不要になりますが、長期にわたって返済がなく実質的に給料の一部だと判断されれば、改めて源泉徴収や仕訳の変更等が必要になります。
この場合、仕訳としても貸付金勘定から「給与(給料)手当」や「給与賃金」へ変更することになるでしょう。
一時的に従業員へ費用を貸し付けていたのでなく、あくまでも福利厚生の一環として給料の一部を前渡ししたと考えれば、それは「前渡金」で仕訳されます。
この場合、まず給与の前払いをした段階では、借方科目として「福利厚生費」を記載し、貸方科目は「現金」として記載します。当然ながら、この時の金額はどちらも前払いされた給与額にしなければなりません。
給与の前払いを行った後に、改めて給料の支払いを行った場合、まず借方科目は例えば「給与手当」として給与総額を記載します。そして、貸方科目には前払い分を「前渡金」として記載し、残分を「現金」として記載する形になります。
給与の前払いについては、前渡金の他にも前払費用や仮払金といった勘定科目を利用することが可能です。
従業員の出費が重なったときなどに、給与前払い制度を導入していると利便性が高まります。個人的な事情で早めに支給されることを望む人がいることから、給与前払いサービスを導入している企業もあります。給与前払いを行うと、源泉徴収はどのように処理するのでしょうか?
結論から言えば、前払い給与を支給した時期に源泉徴収されます。収入金額を収入すべき時期は、契約で決められているなら支給日になり、もし定められていないなら支給を受けた日となります。
国税庁の「給与所得の収入金額の収入すべき時期」として、上記のように定められているからです。前払いをしたからといって特別な時期に源泉徴収するのではなく、支給した時点で源泉徴収します。
源泉徴収とは、会社や個人、学校や社団法人などが所得を支払う人が所得税額を支払金額から差し引きして国に納付することです。
年末調整で税額が確定しますが、毎月の給与や報酬から差し引きして前払いします。納付しすぎた金額は確定申告の際に還付されます。
源泉徴収する必要がないケースとして考えられるのは、常時2人以下の家事使用人にのみ給与支払いをしたり、報酬や料金だけを支払ってたりしている場合です。
源泉徴収の対象となるのは、給与所得となるものです。給料や賃金、賞与などが含まれます。さらに残業手当や休日出勤手当、家族手当や住宅手当なども給与所得として含められるので対象です。
一方で課税されない項目には、通勤手当や旅費、宿日直手当などがあります。
源泉徴収をするのは、所得を支払う時期となります。たとえば毎月25日に給与を支給しているのであれば、毎月25日に源泉徴収されます。支払予定のときに徴収するのではなく、実際に支払う日付に源泉徴収する形を取るのが特徴です。
例外として、役員に対する賞与の場合には、一定の条件のもと源泉徴収をするケースもあります。支払確定日から1年以内に支払いがなかった場合です。この場合には、支払があったものとみなして源泉所得税の納付を行います。
企業で経理をしているなら、給与支払い時に源泉所得税の仕訳をします。前払いをしたときであっても基本的に支給したときに源泉徴収することが多いです。
源泉所得税の仕訳の内容として、給与支払いのときだけでなく、半年に1回の納付、また年末調整時の仕訳があります。それぞれどのような経理業務をするのでしょうか?
仕訳の方法は複数あるものの、社会保険料や源泉所得税は預り金という勘定科目で処理することが多いです。また計上するときには、社会保険料と源泉所得税を別で集計できるように、補助科目を付けておくと後の手間を削減できます。
個人事業主に外注して報酬を支払うとき同様に処理します。
翌月や半年に1回の納付を行うときの仕訳では、給与支払い時に預り金として徴収し、そのまま支払います。借方勘定科目に預り金がきて、貸方には現金や普通預金などの支払った方法を仕訳していきます。
半年に1回納付するなら、預り金を合計して納付します。
・所轄税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出
・給与の支払いが10人未満
上記の条件を満たしているなら、納期の特例を適用させられます。
納付期限は以下の通りです。
・1月から6月までの源泉徴収:7月10日
・7月から12月までの源泉徴収:翌年1月20日
源泉所得税の納期の特例を適用させているなら、上記の期限までに納付します。
年末調整に際して、生命保険料控除や住宅ローン控除、さらに扶養などから源泉所得税の精算を行い、調整します。
年末調整をしていると、過大徴収となるケースもあります。このケースでは、預り金から返金するので、借方勘定科目には「預り金」が入ります。
年末調整をすると、貸方よりも借方の方が多くなり、マイナスとなることもあるでしょう。マイナスとなった場合はそのまま翌月に繰り越していきます。また納付する金額も0円になりますが、納付書に0と入力して送付しておくと、後に税務署から納付していないと間違われることもないでしょう。
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